この夏は、昨年以上に、電力不足の大宣伝にくわえ「計画停電」のお知らせはがきが届き、関西電力管内の住民に不安が広がりました。
 そうしたなか、大飯原発の再稼働がすすめられてきました。いくら政府や関電が、「電力不足だから再稼働をするのではありません」と言っても、さんざん不安を煽り立てて、再稼働を強行したことは間違いありません。
 8月に入り、夏本番ですが、7月末にも暑い日が続きました。いったい、「電力不足」の大宣伝は何だったのか。 すでに、大飯原発3号機がフル稼働したとたんに火力発電を8基も止めたのですから、電力不足ではないことは、事実が語っていますが、先日の政府交渉の結果も踏まえて検証したいと思います。
 そもそも関西電力が、この夏の電力需給の見通しについて、5月19日に「今夏の需給見通しと節電のお願いについて」という文書を発表し、説明していた中身を見てみたいと思います。

 それによると、需要は一昨年並みの猛暑を想定し、さらに「定着した節電」などを織り込んで、最大2987万キロワットとしています。

 もう一方で、供給のほうは、8月の供給力確保の状況について、昨年夏実績2947万キロワットに対して、2542万キロワットとしていました。
 内訳は、2947=(原子力337+揚水448+他社・融通522+火力1415+水力225)。
 2542=(揚水223+他社・融通644+火力1472+水力203)。
 ※表式では万キロワットを省略

 すでに多くの方が指摘してきたことですが、需要は過大に、供給は過小に見積もっているといわなければなりません。

 まずは供給のほうをみてみたいと思います。
 先の内訳を見ていただくと一目瞭然なのは、揚水発電の見積もりの低さです。実は、昨年の揚水発電の実績というのも、例えば兵庫県の奥多々良木の発電施設は、昨年夏でも6基あるうちの2基程度しか動いておらず、そのことを昨年秋の政府交渉でただすと「そういう実態が夏にはありましたので、この冬は絶対にそんなことがないよう事業者に求めているところです」と、担当者こたえたほど、低い数字だったのです。
 そこからさらに低い数字しか見込んでいないのです。
 関電の説明文書には、ポンプで水をくみ上げておかなければならない揚水発電は、余力電力がないと、発電量も限られると言い訳をしていますが、その説明とて、24時間、火力発電量が一定であるとか、およそ真実味にかけるものだといわなければなりませんし、揚水発電は、ピーク対応として一時に発電すれば言い訳で、一度にすべての水を川下に流してしまってダムが空になることも考えられませんから、やはりこの説明はなりたちません。
 少なくとも、“あまり動いていなかった”昨年なみでも、200万キロワット増(大飯原発2基分に相当!)です。

 次に、需要のほうはどうでしょう。
 2987万キロワットと見込んでいるというのは先に書きました。この数字は、過去5年最大需要3095キロワットから、先にも書きましたように「定着した節電」を織り込んで2987万キロワットとしています。
 どうして100万キロワット程度しか節電を見込んでいないのか。「定着した節電」とは一体何なのか。

 昨年夏には、生産シフト等による「無理のある節電」と、照明や空調の調節等の「無理のない節電」とがあり、この「無理のない節電」が定着する可能性があるとし、節電要請のなかった昨年秋やこの春の実績を踏まえてのものだというのです。

 私は、政府交渉で、国民は節電の努力をしている、どうして昨年の夏や冬の実績を加味しないのかと、問いましたが、担当者からは、昨夏も当然踏まえているはずだとの回答がありました。
 しかし、実は、経済産業省のエネルギー・環境会議 電力需給に関する検討会合の需給検証委員会でもこのことが問題視され、議論された経過があり(報告書全文はこちら)、後日、この担当者から同報告書の抜粋を送っていただきました。
 そこには、「需給のひっ迫が想定させる関西電力が定着率を54%として、定着節電分を102万kWしか見込んでいない点について、議論があり、この点について、更なる精査を行うこと」としているものの、「昨秋、今冬、今春の節電実績のうち、▲10%の節電要請があった冬を除き、秋と春の節電幅を定着率とすると関西電力は約3%弱の定着となる。2010年の夏の需要を基準とすると、88万kW程度が定着している節電ということになる。関西電力から申告のあった節電定着分102万kWは、これより上回っていることを踏まえると、低い数値とはいえない」(いずれも報告書の22ページ)と、結局、関電の申告数字をそのまま了としているのです。
 昨年の夏どころか、この冬の節電の努力も加味しないで、見込んだ需要は、やはり過大だといわなければなりません(ちなみに、昨夏実績も踏まえていると答弁した担当者は、報告書の20、21ページのコピーは送ってくれましたが、引用した文章が掲載されている22ページはありませんでした)。

 そして、実際はどうか。
 節電要請の期間がはじまった7月2日から今日まで、猛暑の一昨年夏の需要を超えたのは、7月26日(木)だけ。これは、一昨年同時期7月29日(木)が28.5度だったのに対して、今年は35.5度だったからです。同じように、猛暑だった一昨年夏よりも暑い日を見ても、7月27日(金:35.7度)は、一昨年同時期7月30日(金:33.5度)よりも▲2.9%の需要でした。マイナス幅が少ないのもこの日ぐらいで、7月31日(火:35.8度)は、一昨年同時期8月3日(火:35.6度)よりも、▲12.6%です。だいたい▲8~20%という数字で推移しているのです。だいたい▲200万~500万キロワットです(この一昨年比での日々の実績はこちらから見れます)。

 先の供給能力とあわせると、だいたい大飯原発2~5、6基分の余裕が生まれることになります。
 やはり、“電力不足”は事実ではないといわなければなりません。もちろん、節電の努力は必要です。しかし、「計画停電」などをする必要はどこにもないし、ましてや原発再稼働などは、まったく必要ないのです。